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SHICHIRI-Y


敷地は鎌倉市の住宅地の一角。緩やかな坂道と私道に挟まれた角地にある基壇状の土地。施主は5歳と1歳の子供のいる30代の夫婦で都内に代々続く土地と家を売り、ここに移り住むということだった。彼らはごく普通の仲の良い家族。しかし、大切な思い出の詰まった土地と家を売ってでもこの場所に住みたいという想いはとても強く感じられた。こうした、いわゆる私達と同じ、ごく普通の人が大きなお金を支払い高価な土地を買い、家を建てて住むといった場合に、建物をべったりと地面に乗せて大半を潰し、平面的に利用するだけというのは単純にもったいないなと感じた。この土地に住むということが単に書類上のアドレスに留まるのではなく、正に、この土地に生きる、ということはどういうことか、土地も建物同様、余すこと無く使い倒すことができないだろうか、そんなことを最初に考えた。 また、この場所は風致地区となっており、厳格に敷地の緑化が求められた。当然、近隣の家々も同様に緑化基準を満たしているが、どの家も一様に敷地いっぱいに塀を建て、それに付属する生垣として緑化をしていた。それは一見すると植物ではあるが、何とも無機質な表情を街に向けていた。漠然と、ここではもっと敷地全体が原っぱの様に自然のまま街に開かれた場所となったほうが良いように思えた。構造は鉄筋コンクリートラーメン構造とし、そのフレームの中に構造から離れた木造のボリュームを挿入した。柱、梁は2.8mの均等スパンとすることにより、可能な限りフレームを細くし、コンクリート量、型枠量、鉄筋量を抑えると共に、他物件の使用済み型枠の再利用性を向上させローコスト化に成功した。この300mm角の柱、梁からなる棚のようなフレームが「つなぎ」となり、人、自然、地面、建築、道路、街の間に心地よい距離感を生み出す。道路から1.4m高い地面、さらに1.4m高いデッキ、子供の遊び場となる床下、目線に緑が広がるピロティ、小さな中庭のあるお風呂、海を臨める玄関、リビングから続くテラス、それぞれがこのフレームによって緩やかに関係付けられる。コンクリート土間のピロティも、緑に覆われた床下も、柱の現れるリビングも、等しくこの場所の一部となる。先日、久しぶりに遊びに行った。床下の雑草を撫でながら「ウチにもカマキリが来るようになったんですよ!」と、少年のように喜ぶご主人の笑顔は何よりの褒め言葉のように思えた。


建築敷地 : 神奈川県
竣工年月 : 2016年1月
工事種別 : 新築
主要用途 : 専用住宅
主要構造 : 鉄筋コンクリート造 地下1階地上2階
敷地面積 : 209.58m2
建築面積 : 70.56m2
延床面積 : 126.22m2
構造設計 : 鈴木啓/ASA 担当 : 長谷川理男
施工会社 : 大同工業 担当 : 大川恭賢 日下部健太
写真撮影 : 藤井浩司/ナカサアンドパートナーズ


Location : Kanagawa
Completion : January 2016
Construction type : New construction
Principal use : Private residence
Structure : Reinforced concrete One floor under ground and two floors above ground
Site area : 209.58m2
Building area : 70.56m2
Total floor area : 126.22m2
Structure design : Akira Suzuki/ASA Staff : Michio Hasegawa
Construction company : Daido Kogyo Staff : Yasumasa Okawa Kenta Kusakabe
Photography : Koji Fujii/Nacasa&Partners Inc.


第60回神奈川建築コンクール 優秀賞


architecturephoto.net 掲載
新建築住宅特集 2016年10月号 掲載


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© KANIUE ARCHITECTS